こんにちは 院長の高屋です。
今回は【椎間板ヘルニア】に関するお話です。
椎間板ヘルニアとは、本来背骨と背骨の間でクッションの役割をしている椎間板が、様々な原因によって破綻し、背骨の中にある脊髄神経を圧迫傷害してしまう病気です。 椎間板ヘルニアの中でも、いわゆる腰の椎間板ヘルニアと呼ばれるものは、一見、人間の椎間板ヘルニアと同じようにお考えになる方が多いのですが、脊髄神経の末端が障害を受ける人間のヘルニアとは違い、犬や猫のヘルニアは脊髄神経の中心部が障害されるため、重度のものでは人間の交通事故による脊髄傷害と同様に下半身マヒを起こします。この様なことから動物の椎間板ヘルニアは「家庭内での交通事故」と呼ばれ、状態によっては緊急手術を要するものもあり、腰以外にも首などのヘルニアも急を要するものも多くあります。
・突然触れられるのを嫌がる、痛がる
・階段やソファーなどの段差を嫌がる
・歩き方がおかしい、フラフラ歩く
・立ち上がることができなくなった
・排便、排尿の失禁
このような症状が認められた場合、椎間板ヘルニアの可能性もある為、なるべくすぐに病院を受診して下さい。
椎間板ヘルニアの好発犬種としては、胴が長く肢の短い犬種(ダックスフント、W.コーギー、ビーグルなど)があげられます。 ダックス系は若い時から椎間板ヘルニアになりやすいと言われ、原因としては、先天的に軟骨の形成異常になりやすいことや、若いころから椎間板が固いためもろくなりがちなことが考えられます。
<椎間板ヘルニアのグレード(重症度)分類>
【グレード1~2】 痛みのみの症状(1度)や麻痺症状はあるが歩行可能なタイプ(2度)においては、「内科療法」、「外科療法」の双方で機能の回復が得られるため、再発性や進行性でない場合は「内科療法」でのアプローチを行います。
【グレード3】 後肢の歩行ができなくなった(3度)場合、「内科療法」、「外科療法」の双方で機能の回復がみられますが、「内科療法」の場合、回復までの期間が非常に長くなる為、「外科療法」を選択することが多くなります。飼い主様とご相談の上、治療方針を決定します。
【グレード4】 3度からさらに進んで、排尿機能が消失した症状(4度)においては、「外科療法」では高い確率で治療効果があるのに対して、「内科療法」の場合、半数は治療効果が得られません。4度の場合、基本的には「外科療法」を選択します。
【グレード5】 深部痛覚を失った症状(5度)においては「内科療法」による治療効果はほとんど期待できません。また、「外科療法」を深部痛覚の消失からなるべく早くに行った場合は、治療効果が見込めるものの、時間の経過した症例では非常に低い確率でしか治療効果が得られません。5度の場合、一刻も早く外科治療を行うことが重要となります。
<診断>
【神経学的検査】 体の各部の様々な神経反射や姿勢反応を検査し、麻痺の程度を判断したり、脊髄のどの部分に障害があるのかおおよその検討をつけることができます。
【レントゲン検査】 単純X線検査では脊髄や椎間板は写りませんので、ヘルニアの診断を行うことはできませんが、他の疾患との鑑別や背骨の変形、椎間板の石灰化、背骨の空間などの確認のために行います。
【CT・MRI検査】 とくにMRI検査ではヘルニア部位の特定だけでなく、脊髄の障害の程度、あるいは脊髄造影では診断できないごくまれな病態を検出するのに役立ちます。中でも重度の椎間板ヘルニアで発生する「脊髄軟化症」は死にいたる可能性のあるものですが、MRIでしか診断できません。当院ではMRI検査に関しては、必要に応じて検査センターに依頼して実施します。
<治療>
軽度では、絶対安静と薬による内科療法も選択できますが、重度では、全身麻酔下で行う手術による外科療法が必要です。 症状をグレード分類し、内科治療にするのか外科手術が必要なのかを判断することができます。椎間板ヘルニアの手術成績は、発症してから手術までの時間が短ければ短いほど良いと言われています。また、外科手術後は、ワンちゃんでもリハビリを行います。さらなる悪化を防ぎ、できるかぎり歩行ができるよう、状態に合わせたメニューで無理なく行います。
これが椎間板ヘルニアという病気です。
次回は当院で手術を行ったワンちゃんの話をしたいと思います。
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